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心理学ワールド 84号 巻頭言 実験方法の妥当性と結果の再現性 小牧 純爾(金沢大学名誉教授) | 日本心理学会

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Academic year: 2021

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巻 頭 言

Profile─小牧純爾 1963年,京都大学文学 研究科博士課程単位取 得退学。文学博士(京 都大学)。名古屋工業大 学助手,金沢大学法文 学部助教授,同大学文学 部教授を歴任し,2001年 定年退職,名誉教授。専 門は学習心理学,実験方 法論。著書は『学習理論 の生成と展開:動機づけ と認知行動の基礎』『心 理学実験の理論と計画』 『データ分析法要説:分 散分析法を中心に』(い ずれも単著,ナカニシヤ 出版)。など。  この数十年間に心理学実験の条件制御とデータ分析の方法は一変し た。コンピュータを用いる実験条件の制御や反応測度の測定は,実験者 エラーや測定誤差を低減させた。また,多様なデータ分析ソフトの開発 で,初学者でも複雑な分析を平易に遂行できるようになった。しかし, 電算化によるこうした方法の精緻化とは裏腹に,最近,実験的研究の信 頼性に疑念を抱かせる事実が報告された。心理学の有力誌に掲載された 研究を調べたところ,実験結果が統計的に追証された研究の率が40パー セントにも達しなかったという指摘である。方法の精緻化は実験結果の 再現性の向上にはつながらなかったことになる。  随所で指摘されているように,「結果の有意性」だけでなく,「検定力」 に配慮することは必要である。しかし,適正な検定力を備えた追証研究 を計画することにはいくつかの統計学的な問題がからんでおり,簡単で はないようである。また,順当な検定力をもった実験を実施するとなる と,現行を遙かに超える膨大な数の被験個体が必要になる。一回だけの 実験から信頼性の保証された結論を引き出そうとするのは,研究の方略 として「無理がある」ことになる。再現性の確認には,体系的追証を含 め,検証を重ねることが必要であろう。こうした追証研究の評価に関連 して,「効果量」と「信頼区間」を用いるトライオン(2016)の提案は, 成否を判定する一つの目安になると思われる。  分かっている現象の実験は,学生が履修する入門実験のように,結 果の再現性が高い。妥当性の高い実験の方法が用いられているからであ る。しかし,未知の問題を検討する実験では,想定外の要因の介入によ り,実験の結果が変動するリスクがある。想定に添って関連要因をコン トロールする,適切な実験の方法が確立されていないからである。追証 で再現されなかった実験について,有意性の欠如だけをもとに結果を全 否定するのは単純に過ぎる。実験の方法を点検し,実験結果の齟齬を生 み出した原因の究明に努めるのが先決であろう。これに関連して,過剰 訓練逆転効果における「真逆の実験結果」を分析し,「注意過程」とい う想定外の要因の介入を指摘することにより,追証で示された逆の結果 を含め,実験結果の変動を統一的に説明する枠組みを提示したラブジョ イ(1966)の古典的な試みは,一つの教訓になるのではあるまいか。  参考文献 小牧純爾(2016)『心理学の諸領域』5,53-62.

実験方法の妥当性と結果の再現性

金沢大学 名誉教授

小牧純爾

(こまき じゅんじ)

参照

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